No.46 一杯の美味しいお茶を点てるお湯の沸き具合を松風に例えて
『一杯の美味しいお茶を点てる時の
お湯の沸き具合は、
沸騰寸前の松風(まつかぜ)のお湯加減が、
ぐらぐらと煮えたぎり怒涛(どとう)となった後
それがすこしおさまって、
また松風ほどの温度にもどった時のものがいい。
芸術家も、そのお湯加減のように
一度入った力がスッと抜けた時が一番美しい。』
というようなことをあるテレビ番組で
お琴の演奏家の方がおっしゃっていた言葉が
心に残っています。
松風(まつかぜ)とは、
浜辺の松林を吹き抜ける
潮風の音に例えられた
湯が煮えた時の
シューッという釜の鳴り音。
彼女が50代前後に髪を振り乱して
お琴の活動をしていた時、
何かが違うと思っていた時に
彼女の大先生から頂いたお言葉とのこと。
そうね、
普通の人だって、イケイケの上り坂を
ふと下らなくてはなくなった時の、
そこにこそある美しさ。その刹那。笑
さて、
輝美、お茶のお稽古に通い始めて半年ほど。
お茶を点てるお作法の一連の流れの中で
一番好きなところと言われたら、
迷わず答えます。
煮えたぎる窯に、
柄杓の水一勺を差し
煮えをいなす所作のところ、と。
よどみなく続いていた
シューッという松風の音がふと途切れ、
静寂が小宇宙に広がるその瞬間。
土曜日の午後は
マンハッタンにて
お茶の大先生の秋のお茶会が。
流れるような先生のお点前はもとより
いらしている方々も素敵な方ばかりで
乾いた秋晴れの中、
松風の音がピタッと止まり広がったその静寂に、
スッと背筋の伸びるような感動を覚えました。
お茶会がお開きになった時
一歩ビルのドアの外に出てみれば
マンハッタンの喧騒が
再び動きだしたのでした。笑
おしまい。
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