No.34「コスチウムと空の色」~太宰治『斜陽』より

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先週からの猛暑を避けるように、
家の中の日陰の部屋で、
古い本を引っ張り出して読書三昧のここ数日。

今手にしているのは、

太宰治著『斜陽』。

良い本は、時をおいて毎回読むたびに新鮮な発見がある。

この本は、一体何度読み返して
わたしと今だに一緒にいるのだろう。。。
太宰ファンというわけでもないのに。

こんなに古びてカバーもないところを見ると、
「本を読む女の子が好きだ。」と
うつむいて言った初恋の人の、
気を引こうと読み始めた一冊にに違いない。笑

文頭の、お母さまが”ひらり”とスウプ(スープ)を
かわいくいただくシーンがいい。

今回、輝美の心に響いたのはここ。。。

主人公のかず子が、20年前にお母さまが
編んでくれた牡丹色の首巻(マフラー)をほどいて、
自分のセイタ(セイター)を編みながら。。。

「編んでいるうちに、
私は、この淡い牡丹色の毛糸と、灰色の雨空と、一つに溶け合って、
何とも言えないくらい柔らかくってマイルドな色調を作り出していることに気が付いた。
私は知らなかったのだ。
コスチウムは、空の色との調和を考えなければならないものだという大事なことを
知らなかったのだ。
調和って、なんて美しくて素晴らしいことなんだろうと、
いささか驚き、呆然とした形だった。」

そして、手にしている毛糸がほっかり温かく。。。
冷たい雨空もビロウドみたいに柔らかく感ぜられる。。。とつづく。

そうね。。。

おしゃれと風景が
調和をなしえたとき、
そこに新しいいのちが吹き込まれ、
生々しい美しさを放つ。。

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コスチウムと空の色の調和が美しい、か。。。

文句を言っているわけじゃないけど、
こんな感性を持つ男性は、
今の私の周りにいるのかしらん。。。。

太宰治は魅力的な男性だったに違いない。

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手元にある、
初恋のころからの他の太宰治も
この夏読み返してみよう。

ニューヨークはそろそろ暑さも和らぐとのこと。

みなさんご自愛くださいね。

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